Sunahara Kanon's Diary

ロシアで子育て奮闘中、バレエダンサーの雑記帳

人恋しい季節

6月は移籍していく同僚との別れの時期。
ちょうどその頃出産予定の私にとっては、今、彼らとの時間を過ごしておかないともう二度とない。
 
オーケストラの友人が再来月からカナダへ行く。
彼は22-25ヶ国語を自在に操る身長210cmの元二重スパイ、世界各国を飛び回って仕事していたのだが嫌気が差して趣味の音楽に転身。
おとぎ噺に出てきそうなメガネかけたインテリ風大きなクマの彼には、小さすぎるチェロ。
こんな多彩な人と出会えることは奇跡に近い。どうしてそのことに回りの同僚は気がつかないのだろう、
私はもう彼と友達になりたくて、彼が劇場に来た時は思わず握手を求めてしまった。
多彩という言葉で片付けてはいけない。
 
今まで3-4ヶ国語を自由に操る人や、語学なら俺様自称博士ならたくさん見てきたけど、
彼はもう語学エキスパートというか、もう頭の構造が違うとえしか思えない、
彼のなかで母国語というのは存在しないらしい。彼の国籍はポーランド、親もポーランド人。
「ロシアに疲れた」と言っているので、ポーランドに帰れば?と言ったら、
もう僕はロシアに長く居過ぎたからポーランドでロシア人として見られてしまう、つまり敵になっちゃうから駄目だあああ。ああオカン、オトン、すみません僕はもうロシア人になっちゃいました。あーあ、仕方ないからカナダ行きます。ということらしい。
 
もう一人友人が去っていく。
彼女は最近別の街の建築家と結婚した、ヴァイオリン奏者。ゲリラコンサートしたり面白い子だった。
子供が欲しいから産休手当てを少しでも多くもらうために、公演数はとりあえずどうでもいいから給料の良い劇場を探す旅に出るそうだ。
なんてさっぱりしてるんだろう。結婚式もせず、その費用を新しいヴァイオリンとドレス代に充て、リサイタル企画するらしい。
ドレスが着たいがために何度も結婚したり莫大な借金を結婚式に注ぎ込む一般的なロシア女とのこの違いはなんだ...
だから友人だったのだけど。
 
クリエイティブな身近な友人たちが去っていき、寂しいけれど、来月産めば忙しくてそれどころじゃなくなるのだろう。
あと1ヶ月で妊娠期間も終わるが、いったいこの10ヶ月の間に何通の手紙や葉書、小包を友達に送ったことか。
好きな絵葉書がなくなってしまったのでまたどこか旅行しないといけない!
ズタボロロシア郵便なので葉書一枚送るのに何ヶ月もかかるし、紛失もするけどそれでも書く。
本当に話せる人というのはどうも近くにいないし、ひとつの場所にいないし、数も少ないのである。
1年に1度会えればいいほうで、もう10年近くあってない友もいる。
特にこうして妊婦で仕事もできず家にいて暇だと、誰が自分にとって大切か見えてくる。
 
私は人に恵まれていると思うし、私も彼らのことは貴重だと思っている。
 
最近気がついたのは、ボリショイの同期、近い先輩後輩含めて誰もロシア人と結婚していないこと!
日本人とも結婚した人がいない、もちろん子供もいない。
なのにアメリカ人と結婚したのは二人もいる!!なぜだ笑
だからボリショイの寮母(マリーナ)にとっては私がおもしろくて仕方ないらしく、
「なんであんただけー?ロシア男いいでしょー?最高でしょー?あはは」とメールがしょっちょう来る。
マリーナの息子はボリショイで活躍中のベリャコフアルチョム。同期の彼も結婚した、ひとつ上の先輩ダーシャと。
ただただ月日の流れを感じる。
 
5月23日に26歳になりました、14歳でロシアに来たはずなのに気がつけばもう隠しようのない大人な年齢。
だけどケーキにはきちんと年齢分のろうそくを立てる。
ロシアで誕生会は誕生日の人が自分で企画して、お祝いしてもらいたい人を家に招くというスタイル。
去年は夫と二人で祝ったけど今年は監督と姑呼んで4人で。

 
Happy bitrhday to you -♪の部分がズドニョムラジジェーニヤーチービャー♪になるか、
ハッピびょーるすでいトゥーユー♪になっちゃうロシア人によるお祝いの歌にも慣れた。
娘が出来ても夫のこの歌い方を訂正せず、私はピアノ伴奏係に回るでしょう。