Sunahara Kanon's Diary

ロシアで子育て奮闘中、バレエダンサーの雑記帳

Batterie

ここのところ、Batterieのことを全く考えない日はないと言っていい。
Batterieとは空中で片足をもう片方の足で打ちつけ、着地するまでの動作を表す。

ロシアではзаноскиと呼ぶ。
200年を超える歴史を持つこの跳躍をロシアのバレエアカデミーでは、2年生(10~11歳)からのプログラム =7年間に及び訓練する。
但し、1991年以前の文献によれば
6年間の訓練(3年生から)という説もある。
Batterieはバレエにおいて最も難しく、美しい動きと言っても過言ではない。

跳躍はPas assemble→sissonne→cabriole→pas jete⇒pas de basque, saut de basque, ciseaux と発展していく。今回私が注目しているのはBatterieを含む4つ目のpas jeteまでの動きについて。※basqueについてはブログ記事「体重移動」に書き留めている。

恐ろしいことに、最終学年の8年生でも習得せねばならない技が残っている ― "全方向へのgrand cabriole ferme"

ここでは男子生徒のプログラムには、
一切触れないこととする。

45度のcabrioleは私も3/4拍子 ワルツの16~32тのコンビネーション、
Pas de poisson, pas failli, pas gargouilladeと合わせて使っている。
8年生にはsissonne fermee/ouverte battue, pas cabriole fermeeをメインとしたコンビネーションの為に、装飾のpasとして使っている。
その繋ぎにpas balance en tournantばかり使ってしまう私の欠点に関してはアドバイスを頂きたい。

90度のcabrioleになると、この動きがメインとなる他ないのでわざわざ研究するものでもない。
pique en dehorsと繋げたコンビネーション例が多く見られる。(参考文献 В. Костровицкая " 100уроков классического танца" )

Batterieは 1. Pas battu 2. Entrechat 3. Brise
に分類される;
1.両足で跳び、両足で降りる
※2,3年生のプログラム
Echappe battu
Entrechat quatre, royal
Pas assemble battu 等

2.両足で跳び、片足で降りる
※4年生のプログラム
Entrechat trois, cinq
Pas Echappe battu(複雑形)
Brise 等

3.片足で跳び、片足で降りる
Brise dessus-dessous
Pas ballone battu 等

Batterieを含む90度の跳躍は6年生から―
1. Grand pas assemble battu
2. Grand cabriole
3. Grand fouette cabriole
4. Grand cabriole ferme

これら90度の跳躍も45度と同じくpas glissade, chasse, coupe, sissonne tombeから入るものだが、メッセレルは、全てとは言わないけれど、coupeから入るものを基本例としている。
バレエ作品ではcoupe, sissonne tombeから入るものが多い。
しかし、授業(普段の稽古)ではglissadeから入る訓練をする必要があるはず。
その理由を言葉で説明できる為の知識を得ることが今の私の課題である。

バレエは己との闘いであるが、他人から評価されるものである。私などが安易に芸術などと言ってはならない。芸術は一瞬一瞬に、誠実の限りを尽くした人間によって生み出された傑作といえよう。私たち研究者には、それらを守り、後世に伝えていく義務がある。バレエは古典舞踊であり、必ずしも新規性や発展性が求められるものではない。
誤解しないで欲しいのは、これはバレエ教授法を研究する一人の学生の意見であり、誰かに対して賛同を求めているわけではない。
ただ、バレエがすでに遺産となりつつあるのはとても哀しい。


"春の水" マクシーモワとヴラーソフ

写真はУроки классического танца メッセレル著 より