Sunahara Kanon's Diary

ロシアで子育て奮闘中、バレエダンサーの雑記帳

卒論

やっと卒論を書き上げた。国家試験のため9年目となるボリショイに来ています。
テーマは  "プロフェッショナルなバレエ教育機関での第7学年プログラムに基づいた全種の跳躍とbatterie教授法研究"
日本語訳するとくどいな。

Batterieとは空中で片足を片足で打ち付ける、という意味であって、パの名前ではないのです。
参照; http://s.ameblo.jp/kanonballet/entry-12037124012.html

跳躍 と一口に言っても、
1. 両足から跳んで両足に降りる―
例 Pas assemble(これに関しては色々な解釈があります、タラソフは両足から両足の跳躍はpas echappeだけだと言っているが、現代のボリショイの教授はpas assembleもほぼ両足から跳ぶものであると生徒に指導している。)
2. 両足から跳んで片足に降りる―
例 Pas jete
…………こうして跳躍を足の運び別に分けていくと5種類になる。(batterieは3種類)

跳躍の数は第7学年女子のプログラムだけで20、batterieは4つ (2008年改訂版)
跳躍に苦手意識のある人も、まずは五種類のなかから探してみましょう。
両足から両足に降りる跳躍が苦手でも、
もしかしたら片足から片足に降りるPas cabriole類なら鍛えれば得意になるかも。
Sissonne ferme battue などの両足踏み切りが苦手でも、pas jete renversee など片足は綺麗にできる生徒は私もたくさん知っています。どんな生徒にも、なにか得意となる跳躍があるはずなのです、見つけられればセンターレッスンが楽しくなるはず。以上は私自身の体験談です。

跳躍やbatterieにおいて、何が一番に重要なのか。私の考えとしては
それは腕の運びと顔の向きである―初期に学ぶ各pasの最終発展形にはほとんどgrand/en tournant が加わってくる上、最高学年では円を描きながら移動する技術(マネージュ)を習得しなければならない。例えば、temps lie saute en tournant を小さな腕のポーズで行うことは正直、足のアンドゥオールが出来ていればそんなに難しくない。顔の運びも小さな波で済む。ここにgrandが付けば、それはまるで違うpas、着地のポーズと同時に腕を大きなポーズへと運ぶ動きには相当な努力が必要なのです。
腕の動きが大きくなるということは、顔の運びも波が大きくなる―最後のポーズだけ顔をパッと上げ、ポーズが出来ていればそれで良いのは日本のコンクールだけであり、ロシアのバレエではpreparationの音がなる前の時点(за такт) から顔の位置がひとつひとつのpasに対して決まっているのです。
私は顔の運びが重要だということを知ったのは留学中、レービチ先生とスワニルダの稽古をしていて、イタリアンフェッテで止められた時。足のことを注意されるのかと思ったら、顔の向きだったーそれは最初のエカルテ時の顔ではなく、フェッテして6の方向を向いた後のアチチュードへ持っていくときの顔の運びだった。日本では注意されたことも、気を付けたこともなかった。顎の位置が違うと何度も叱られた。君の肩幅はそんなに広くないだろう、肩幅以内で最大限に使うのだ、顔、顎こそ踊りなのだ。
このレービチ先生の言葉忘れたことはない。それ以来、私は日本のコンクールで踊ってきたスワニルダの動画が未だに見られない。あれはバレエではなかった。

腕の運びの大切さについて熱弁しているプリセツカヤの動画がyoutubeにありました、是非見てみてください。

64ページ、そのうちの1/3はbatterieの歴史について。第7学年(16~17歳)は、留学当時の記憶を辿っても、一番に難しい学年だった。正直、5年生までは難しいパはほとんど学ばない。6年、7年生のプログラムが最も重要で、この2年間で将来変わると思う。やはりどんな綺麗事を言ってもテクニック無しにバレエには成り得ない。

私はバレエをほぼ6歳から始めたが、まさかその時は娘がバレエ教授法について卒論をロシア語で書くことになるとは、母は夢にも思わなかっただろう。

国家試験は 卒論内容に沿って撮影した動画を流しながら、国家審査員の前でプレゼンという形になる。
もう私ができることはない。全てやりきった。明日を待つだけ。
昨日は一人トレチャコフ美術館へ行ってきた。
美術館や音楽会など、感性で美しいものに触れるときは特に、何度も言うけれど、よっぽど素敵な人とでない限り、一人でいるほうがずっと優雅に過ごせるのです。
アイヴァゾフスキーの"黒海"をみて、今すぐ旅立ちたくなった。国試もバレエも何もかも忘れて、彼の描く海の波と色と声を感じたい。

と思ったことはここだけに秘めておこう。


"やるなら全力でやってこい"
と言われてる気がした。
トレチャコフ美術館にて。